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2009年 05月 31日
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電話帳、どういった使い方ができるでしょうか。 子どもなら、自分のおしりに強いてちょっとした椅子に使うかもしれません。 びりびり紙が破けるおもちゃにもなります。 大人であれば、電話番号を探すのに使うでしょう。 場合によっては、漬け物石代わりに使うかもしれません。枕にもなりますね。 力自慢にとっては、真っ二つに裂くことで力を見せることもできるでしょう。 バーベル代わりにもなりますね。 目の前に電話帳があるだけで、何に使うかは、人や状況が決めたりするものです。 アフォーダンス -新しい認知の理論 佐々木正人・著 著者は、東京大学大学院の教授、専門は生態心理学の方です。 人が物を知覚するには、五感を使う、とは良く説明されるところです。 目は視覚を、耳は聴覚を、鼻は嗅覚を等々、、、 では、目が見えなくなったらとたんに視覚に頼っていた知覚は皆無になるか、、、、と言われるとそうでもありません。 本書は、認知の方法における比較的新しい理論、アフォーダンス理論のとても平易簡潔な入門書です。 アフォーダンス理論は、アメリカの知覚心理学者ジェームス・ギブソンによって1960年代に完成され、その後近年の人工知能や認知科学に大きな影響を与えています。 私たちは、見て情報を得ています。 本を読んだり、WEBを見たり、部屋の中の床を見て歩いてみたり、壁があると避けたり。きりがありません。 見えている、見えていて情報を取り出しているというは、毎日、一瞬一瞬使っていて何とも思っていませんが、「何で判っているのか」は「皆目見当がつかない」ように感じます。 古くは、網膜に映って像となっているものが視覚として判っていることだ、という説が主流でした。 今では、アフォーダンス理論などにより、人間の知覚や認識の仕組みについて違った解釈がされてきています。 さて、では一体「アフォーダンス」とは何なのでしょう。 アフォーダンスは、ジェームス・ギブソンの造語です。 原語は、アフォード(afford) ~を与える、~ができる afford ・If you cannot afford something, you do not have enough money to pay for it. ・If you say that you cannot afford to do something or allow it to happen, you mean that you must not do it or must prevent it from happening because it would be harmful or embarrassing to you. ・If someone or something affords you an opportunity or protection, they give it to you. 与える、できる、よりもちょっと強く、余裕があるといった意味です。 では、ギブソンの考えた「アフォーダンス」とは、 環境が動物に提供する「価値」 言い換えると、 動物にとっての環境の性質 となります。 動物は、情報を環境に探索してピックアップする、と著者は述べています。 そこで、冒頭の電話帳です。 子どもは電話帳を探索して、遊び道具や椅子という情報をピックアップしました。 大人は、電話帳だと判って電話帳を探索して電話番号を見つけました。 力自慢は、電話帳を探索して力を見せる道具になるという情報を見つけました。 単純な言い換えの様にも思えますが、知覚や認識とはこういった物だというのがアフォーダンス理論、だと私は理解しています。 電話帳そのものは、いくつもの情報を内包しているようです。 こういった考え方は、何も象牙の塔だけのお話ではありません。 WEBのアクセシビリティにアフォーダンスは使われます。 そして、デザインにも活用されます。 人間の知覚や認識という意味では、言語活動にまで展開できる可能性を秘めています。 さらには、組織活動やチーム活動、ワークショップの仕立てにもアフォーダンス理論は活用できると考えています。 人は、判ることで、理解と次への行動が促されます。 アフォーダンスは、理解と行動を導く知覚や認識を考える重要な学問領域になるようです。 本書はその最初の道案内になりそうです。 ------------ いろいろな本の紹介は ≪こちらのページ!!≫
by tomoharu_hikoda
| 2009-05-31 23:28
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